『ジャパン・アルムナイ・アワード2022』で審査員賞を受賞した株式会社ドリームインキュベータ 執行役員の沼田 和敏氏、中小司 和広氏と、審査員 金坂 直哉氏との特別対談をご紹介します。

概要

創業20周年を機に公式アルムナイネットワークを発足。以前はDI主導の面が強い関係性だったが、ネットワーク発足以降は、アルムナイ個人にフォーカスする機会が増加した。

本年は、現役社員とアルムナイの対話機会の創出、ブランディングへの活用、アルムナイを講師とした研修などの活動を実施。特にブランディングでは、採用ページにアルムナイの活躍を取り上げたことで、アウターブランディングのみならず、アルムナイに対する会社の姿勢を社内に対しても浸透させる機会となった。

今後は、アルムナイにネットワークを自身の事業に役立ててもらい、DIに所属していたことを「生涯の価値」につなげてもらう。それが結果としてDIのブランディングに繋がっていくような、長期的な関係を構築していく。

評価

人的資本の充実が経営において特に求められるコンサルティングファームのなかでも、日本を代表するドリームインキュベータ社がここまでアルムナイとの関係性構築に注力している点を評価した。採用ページにおいてアルムナイのインタビュー・活躍を掲載しアウターブランディングを図るのみならず、アルムナイに対する姿勢を社内に浸透させた実績も踏まえ、審査員賞に選出。

対談

「まだまだ、やりたいことができていない」模索する中での受賞

金坂:改めて受賞おめでとうございます!

もともとDI卒業生の知り合いが何人かおりまして、皆さん優秀で、卒業後もDIでの経験を土台に活躍されているなという印象がありました。

アルムナイの取組みは、各社知恵を絞っていらっしゃいますが、DIさんの「卒業後の優秀な人材とつながりを作り、社内の人材育成につなげていく」というのは理に適っていて、DIさんらしい非常に素晴らしい取組みだと思います。

沼田:栄誉ある賞をいただき、ありがたいと同時に、正直びっくりしております(笑)。

事務局のメンバーは日々頑張ってくれており、様々な企画を練っていますが、コロナ禍の影響もあり、企画してくれたもののうち、まだ半分も実行に移せていない状況です。やりたいことができないフラストレーションがたまっていたところでした。

そんな中で受賞できたのは、ありがたいながらも驚いたというのが本音です。

中小司:立ち上げ期には、アルムナイの活躍を紹介する記事の作成のアドバイスを頂くなど、ハッカズークさんからご支援いただきました。一緒にここまで来られて嬉しい気持ちです!

優秀なアルムナイと交流できることが、DI現役社員のベネフィットに

───立ち上げ期から取り組んでこられる中で、苦労もおありだったのではないでしょうか。

中小司:「DIalog(ダイアログ)」(現役DI社員とDIアルムナイが参加して、毎回ゲストを迎えウェビナー形式で対話を行うイベント)の集客は今でも苦労しているところです。どうしたらもっと色々な人に聞いてもらえるか、社内で検討を重ね、登壇者とのコミュニケーションの見せ方など、ブラッシュアップしております。

もっと見る方の数を増やしていきたいところですが、まずは続けていくことが大事だねということになっています。積み重ねが少しずつ集客数にも表れていると思っています。

沼田:集客数の増加は、企画に工夫を凝らすなど、メンバーが努力してくれた効果はもちろんですが、それと同じくらい、草の根的に直接声をかけて集客してくれる社員の力が大きいと思っています。

面白いコンテンツを作っていくことはもちろん大事なのですが、それだけだと独りよがりなものになってしまうといいますか。地道な活動も大事だなと感じています。

──発足当時は事務局におられた方が、その後アルムナイになって一緒に動いてくれたりなど、色々なきっかけがあって活動が活発になっているんですよね。

金坂:DIアルムナイは様々なジャンルで活躍されていますが、たとえば「こんな人に来てもらってこんな話で盛り上がった」など、具体的なお取り組みの話を伺ってもいいですか?

沼田:ちょうどこの間、DIを卒業後、Gunosyの経営者として知られる木村さんをお招きし、DIのCOO細野との対談という形でDIalogを開催したところ、A.L.I.Technologies COOの片野さんも飛び入り参加してくれました。コロナ禍でなかなか実現できていなかったのですが、ようやくアルムナイの方にオフィスに来ていただくことができたのは良かったです。
今までに開催したイベントの中でも動員数が多く、社員からも質問もたくさん出て、非常に盛り上がりましたね。

金坂:自分は片野さんと同級生なのですが、コンサルティングファームの海外法人代表を務めるなど、日本人離れした経験を積んでおられる方ですよね。こういう方の話を生で聞けるのは、DI社員にとってベネフィットだと思います。

沼田:卒業生の多くは私自身が過去一緒に仕事したことがあり、当時は先輩後輩の関係だったわけですが、今は本当に学ばされることばかりです。先輩後輩の枠を超えて、「仲間」として色々な話を聞ける機会をいただけるのは、本当に貴重なことだと感じています。

中小司:今までに開催したDIalogの中で私にとって印象深かったのは、DIからDeNAを経て、スマートニュースのCSOをされている任さんですね。任さんのことは、アルムナイネットワークの取組みが始まる前からすごい方だなと思っていました。

社内には任さんと一緒に仕事をしていた先輩社員もおりますが、自分にとっては簡単にお会いできる存在ではありませんでした。それが、DIalogに参加してくださって直接お話しすることができたんです。

お会いできたことで、「こんなに著名で優秀な方が自社のアルムナイなんだ」という、会社に所属する者として自信や誇らしさにつながりました。

アルムナイとの交流が、社内の空気を変えてきている

──発足当初は現役社員をどのように巻き込むかについて議論があったと思いますが、社内で変化はありましたか?

沼田:社内の温度感は変わってきましたね。たとえば、DIalogでは現役社員からの質問が増えて盛り上がるようになってきました。我々が到達したい理想の状態にはまだまだ遠いですが、発足当初に比べると、少しずつ空気が温まってきています。

中小司:社内イベントにアルムナイが登壇してくれると、最初はその方をもともと知っている人が会いに来てくれている感じだったのですが、最近は社歴が浅い人の参加も増えています。ここ数か月から半年くらいでそんな変化が見られて、続けてきて良かったなと思っています。

沼田:最初はアルムナイと現役社員との交流に懐疑的な人もいたんです。「社員が引き抜かれるんじゃないか」「アルムナイに憧れて辞める者が増えるのでは」といった不安が挙がることもありました。そんな中で、事務局のメンバーを中心にコツコツと取り組みを続けてくれたおかげで空気が変わってきたのだろうと思います。

──取り組みに懐疑的だった人に対して「この一手が効いた」というものはありますか?

沼田:何かキッカケがあって、というよりは、自然な変化だと思います。定期的に開催している対談イベントや、HPに掲載している対談記事など、地道な取り組みを見てもらい、社員の関心が向いてきました。その中で、当初懸念されていたようなネガティブな事象は起こっておらず、むしろポジティブな影響ばかりだと気付いた人が多かったのではないかと考えています。

中小司:卒業してから時間が経っている方をお招きするにあたっては、社員側に漠然とした不安があったのかもしれません。ただ、実際にアルムナイの方とお会いして、良いイメージが上書きされていく経験を重ねてきたことで、現役社員側のアルムナイに対する認識も変化してきたのでしょうね。

──発足当時は、新規退職者のネットワーク登録率が5割程度だったところ、現在は新規退職者のほとんどが登録してくれているんですよね。

中小司:大きな変化ですね。アルムナイと関係を保つメリットが見えてきたことで、新たに退職する方に対してもアルムナイネットワークに入るよう促す動きが出てきました。それが登録率の向上に現れています。

金坂:これからも中長期的に活動を続けていかれると思いますが、アルムナイと現役社員の交流をきっかけに新たな事業が生まれたりなど、アルムナイネットワークを起点・触媒として、社内外にインパクトが生まれていくと良いですね。今後のご発展を楽しみにしております!