設立の背景

当社は中期経営計画において、「未来にわたって、世界のリスク・課題の解決でリーダーシップを発揮するイノベーション企業」を目指しています。

意思決定層の多様化や、新たなビジネス創造を進めていく上で「社外カルチャー経験者」の必要性も高まっており、人財プール多様化の一環として、「MSビジネスネットワーク」というアルムナイのネットワークを新設することとなりました。

日本社会全体を見ても人材の流動化は進んでおり、当社としても同様の問題意識を持っていましたので、そういう意味でもアルムナイネットワークは会社全体のニーズと一致しています。意思決定はスピーディーに進み、2022年5月の動き出しからわずか4カ月後の9月に、MSビジネスネットワークが立ち上げられました。

また、退職者と話す中で、「辞めてしまったら、2度と三井住友海上の敷居はまたげないと思っていた」と聞き、当社とアルムナイ間で認識のギャップが生じていることに気が付きました。当社にそのような意識は全くなかったのですが、退職者の皆さんからはそういう会社だと思われている。そう認識を新たにし、その現状を変えたいと考えたことも、アルムナイの具体的な取り組みを開始するきっかけの1つでした。

新たなチャレンジをするために社外へ出ていった仲間が、もう1度当社に戻りたいと思え、かつ、実際に戻れる会社でありたい。その想いが、本取り組みを推進する動機となっています。

MSビジネスネットワーク立ち上げの反響は非常にポジティブで、現役社員とアルムナイの双方から「興味深い」といった声を多くいただきました。また、日経新聞で本取り組みを記事に取り上げていただいたこともあり、当社のお取引先をはじめ、さまざまな企業さんから「三井住友海上のアルムナイの取り組みについて聞かせてほしい」といったお声も複数ありました。現在も定期的にそういった面談のご依頼があり、世の中のアルムナイへの関心の高さを感じています。

設立の目的

アルムナイネットワーク設立の目的は大きく3つあります。

まず1つ目は「再雇用」です。
当社では得られなかった専門性や知見を獲得した魅力的な社外カルチャー経験者でもあるアルムナイ。当社をよく知る卒業生として、再雇用前後のミスマッチが少なく、即戦力となり得る人財だと考えています。

2つ目は「ビジネス連携、当社内での兼業・副業の募集」です。
元社員だからこそ、コミュニケーションギャップが少なく、スムーズな連携ができるはず。卒業後に起業家や専門人材となったアルムナイとの協業によって、オープンイノベーションに寄与したいと考えています。

3つ目は「採用力の向上」です。
社員の退職後のキャリアにも関心が高い最近の学生に対して、多様なキャリアを築いたアルムナイの存在で、当社がイノベーション企業であることをアピールできると考えています。

アルムナイネットワークの現在

現在、当社のMSビジネスネットワークには約150人の登録があります。そのうちの4人が「アルムナイサポーター」として、各種トークグループの作成やネットワーク内での積極的な発言を通して、運営をサポートしてくださっています。

設立から約3カ月の間に、アルムナイとのオンライン交流会を2回行い、それぞれ、アルムナイ10人前後と当社事務局メンバーが参加しました。参加者からは「アルムナイとなった同期同士の関わりが復活してうれしい」「三井住友海上という、地元に戻ってきたような気持ちになり、ほっとする」といった明るい声を多くいただいています。

その他の取り組みとしては、アルムナイのインタビュー記事の掲載です。当社在籍時の職務から退職に至った経緯、退職後のキャリアやMSビジネスネットワーク設立への率直な意見・感想等を掲載しています。今後も1〜2カ月に1回ほどのペースで、定期的に発信をしていきたいと考えています。

また、11月末には社内の広報誌にアルムナイ交流会・アルムナイアワードの記事を掲載しました。社内他部署の役員や社員から「記事、読んだよ」と声をかけられることもあり、社内における本取り組みへの関心の高さも実感しています。

採用力の向上に関してお伝えすると、2024年度入社向けの新卒採用セミナーに、既にアルムナイに登壇していただきました。「当社に対してネガティブに感じていたところや退職理由も、赤裸々にお話いただいて問題ありません」とお伝えし、学生の皆さんとざっくばらんにお話いただきました。当社への入社を検討してくれている学生の皆さんに、現役社員だけではなく退職したアルムナイの生の声を届けることで、入社後のギャップを減らせると考えています。

なお、アルムナイから再入社の希望があり、所定の選考を経て、今年度内の再入社が決定しています。今後も着実にアルムナイとの関係性を深めていければと思っています。

今後の目標

直近では、現役社員が全員参加をする「チャレンジプログラム」という社内のビジネスコンテストで、アルムナイとの連携を予定しています。

チャレンジプログラムは事故や災害、病気の予防や、発生時のリカバリーなどに寄与する事業アイデアを募集するもので、現場の社員から生の声を拾い上げ、それらを関係各部・役員で精査し、新しい商品やサービスとしてかたちにしていくことを目的としています。

今年度のチャレンジプログラムでは、アルムナイの方々に審査に加わっていただきます。新規ビジネス開発やスタートアップでの経験をお持ちの方に有識者として協力をいただくことで、事業アイデアを、より洗練させていきたいとするものです。

MSビジネスネットワークはまだ設立から3カ月ほどですが、アルムナイの取り組みには無限の可能性があると感じています。お互いにシナジーを生み出して新たなビジネスを創出するのはもちろん、当社に再び戻ってきていただき、他社で培った新たなスキルや専門的な知識を活かしてくださることを大いに期待しています。アルムナイからの刺激を受け、現役社員にもポジティブなエナジーを感じてほしいです。

また、無数にある企業の中から当社に入社することを選んでくださった現役社員たちが、生き生きのびのびと働ける環境や制度をつくっていくことが人事部の使命の1つであると考えています。その実現のために、現役社員の声だけではなく、退職したアルムナイとの対話を通じ、退職に至った経緯や原因のみならず、我々が気づけていない当社の課題や魅力をも、再認識していきたいです。

イノベーション企業を目指すのはもちろん、最終的には三井住友海上を「働きたい企業No. 1」として世の中から認知していただけるような、そして現役社員とアルムナイの皆さんが胸を張れるような、そんな会社づくりをしていきたいと思っています。

審査員の評価

この活動を通じて何をしたいのかが明確である点を評価。それに加えイノベーションや人的資本経営でも指標となる組織文化への寄与など各施策の目的も非常に明確であるとともに、ビジネスインパクトも大きい。 

「2 度と敷居をまたいではいけない」というアルムナイの認識がすでに変わり始めている事実のインパクトの大きさも評価。 まだ活動開始初期ではあるもののこれら目的の明確さとインパクトの大きさを評価し準グランプリに選出。