設立の背景

株式会社臨海は神奈川、東京、千葉、埼玉、大阪に学習塾を約500校展開している会社です。

毎年、受験を終えた生徒が学習塾を卒業していきます。中には、卒業後に講師としてアルバイトをしてくれる学生もいますが、ほとんどの人は当社と接点がないまま社会に羽ばたいて行きます。

これを組織化できたら、人材資本として非常に価値があるのではないか。そんな考えから、2015年より塾の卒業生を対象としたネットワークの構築を行いました。こちらは現在、LINEで運営をしています。

並行して、当社でアルバイトとして働いたのちに退職した人たちにも注目をしました。人材採用をするにあたり、当社を退職した人たちと関わりを持ち続け、その方たちを再雇用することができれば、新たな採用の仕方が見えてくるのではないか。そういった発想から、2017年からアルムナイネットワークの構築に取り組み始めています。

ただ、スタート当初はなかなかうまくいきませんでした。費用がかからないメーリングリストから始めましたが、1年目に破綻。2年目からはInstagramを使って3年間試行錯誤を重ねたものの、双方向に発信をするような環境は実現できず、2020年に正社員を対象としたアルムナイ専用のシステムを導入することとなりました。

取り組み内容

現在、アルムナイネットワークの事務局メンバーは人事部の4名です。アルムナイに関する取り組みの社内認知度は上がってきてはいるものの、一つの独立した部署になるまでは至っていません。なので、4人とも他の業務の傍ら運営を行っています。

意識しているのは、自分たちが楽しんで発信をすることです。今回のアワードなど、いただいた機会に全力で乗っかり、楽しむ。アルムナイの取り組みについてネガティブなイメージを持っている人もいるかもしれませんから、我々がポジティブでいることが大切だと思っています。

人事部では採用のほか、退職周りの対応も行っています。まずは採用のタイミングで「当社にはアルムナイネットワークがある」ことを入社前から候補者の方にお伝えし、実際に入社し、退職するタイミングで「長くつながっていきたいので、よかったらアルムナイネットワークに登録してください」とお声がけをする。

このように入り口から出口までの流れができているのは、人事部が取り組みを行うメリットだと思っています。

アルムナイネットワーク内での具体的な取り組みは大きく2つです。一つはオフ会。「ビールが好きな人」や「パパ会」など、仕事とは違う切り口でつながりを持つオンラインイベントを4回ほど行ってきました。

また、先日はコロナ禍の規制が緩くなったこともあり、少人数でしたが、初めて対面でアルムナイとの交流を行いました。集まった方々は在籍時に全く接点がなかったメンバーです。新たなつながりの機会を設けられたことは、価値あることだと考えています。

もう一つの取り組みは、アルムナイへのインタビュー企画です。これまで7名のアルムナイに、現在のお仕事や臨海の経験がどう今に生きているのかなどお聞きし、記事としてネットワーク内で発信をしました。

それにより「自分はこういう事業をやっているから話を聞かせてほしい」など、アルムナイ同士の横のつながりも生まれています。

アルムナイネットワークの現在

アルムナイネットワークの登録者数は約100名です。ちょっとした意見の吸い上げがしやすいのは、当社の規模ならではの良さだと感じています。

アルムナイネットワーク導入時は、「驚いた」というアルムナイからの反応が多くありました。恥ずかしながら、当社はこれまで退職者にまで手を広げた施策を行うことをしておらず、「こういう取り組みを臨海がすると思わなかった」という声があったのです。

だからこそ、アルムナイの取り組み自体が、会社が変化の最中にあることを伝える良い機会になっていると思います。

当社のアルムナイネットワークは再雇用を目的としてスタートし、実は2021年に1名を再雇用し、先日も「正社員としてもう一度働きたい」という問い合わせをいただいています。

これまでの再雇用は、退職者が個別に仲が良い現役社員に声を掛け、そこから人事に問い合わせが行くケースがほとんどでした。ところが先日のお問い合わせはアルムナイネットワーク経由です。個別に連絡先の交換をしているわけではない方から、アルムナイネットワークを通してご連絡をいただきました。

本当の意味で、会社と退職者がつながる入り口として、アルムナイネットワークが機能したのだと実感しています。個々のつながりだけではなく、会社と個人が公につながることの重要性を改めて感じます。

今後の目標

当初の目的は再雇用でしたが、今はもっと大きな視点でアルムナイネットワークを運営していきたいと考えるようになりました。

例えば、アルムナイネットワークの存在自体が企業ブランドにつながるようにも思います。近い将来、アルムナイのお子さまが臨海の塾に通うこともあるかもしれません。顧客としてまた関わる可能性も十分ありますから、再雇用のみならず、広い視点でアルムナイネットワークを考えたいと思っています。

2023年2月には、2024年新卒採用の一環として、さまざまな業種のアルムナイが登壇するセミナーの実施を予定しています。

退職した人が話をすることに疑問を持つ方もいるかもしれませんが、当社は入社前から働く場所や仕事内容を選べるような会社でありたいですし、入社後も自分自身の価値観の変化に応じてキャリアをチェンジすることを後押しする会社でありたいと思っています。

そして、それは退職後も同様です。アルムナイのキャリアの応援ができるような会社でありたいですし、アルムナイから応援をしてもらえるような会社でありたい。

そのためにも、引き続きゆるく長くアルムナイの皆さんとつながっていきたいと思っています。数値目標を掲げることも業務を行う上で大切ではあるのですが、アルムナイネットワークに関しては、ゆるくつながりながら結果につなげ、その結果から新たな方向性を見出していく考え方がポイントになるように感じています。

審査員の評価

他応募事例と比較して規模は小さいながらも確実に取組み、成果に結びつけている点を評価。

それに加えて、3年半にも及ぶツール選定と社内理解浸透、その後2年間の継続的活動の極めて高い持続性、それそれの取組を前向きに楽しみながら誠実に続けている姿勢が、他の企業に与えるポジティブなインパクトを評価し、準グランプリに選出。