連載コラム#02 企業インタビューから感じる“兆し”

アルムナイという“兆し(サイン)”とは

「組織」に着目しアルムナイ組成に着手した企業担当の方々に対してインタビューを行いました。そこから浮かび上がって来たのは、さまざまな“兆し(サイン)”。本コラムでは、アルムナイというアンテナを通じてキャッチした“兆し”を定期的にレポートすることで、働き方や社会の変化を追跡・発信して行きます。

企業インタビューから感じる“兆し”

今回の企業インタビューから感じてきたのは、企業というよりもむしろ、環境変化にさらされている日本的企業組織の中でイキイキとサヴァイヴしていくために知恵を出そうとしている個およびその仲間達の存在であったように思います。

紐解いてみれば、企業という存在よりも遥か昔から、人間は外部環境変化の中で生き残っていくために、道具を始めとして様々な知恵を出し続けてきた存在です。人間がそのように環境変化に適応し、種として生き残ることができている大きな要因は、協力・協働作業ができることだと言われています。

これからの時代をサヴァイヴしていくために、社内に留まらず、勝手知ったる元仕事仲間であるアルムナイともネットワークを構築して連携していこうという若手を中心とした面々の動物的本能ともいうべき意思(エネルギー)と、それに対して感覚的動物的に共感、共鳴して動こうとしている人達の存在。そうした動きは、少し引いて捉えてみると、むしろ自然なこととして捉える方が素直かもしれません。また、企業人という観点から見ると、新たなロイヤリティ、エンゲージメントのあり方とも感じ取れてきました。

翻ってみると、これまで日本の中では、特に大企業という仕組み・存在は、社員の生存のかなりの部分を安全装置として機能し、それに呼応して社内には巧みな生態系が築かれてきたように思います。しかし、先だってのトヨタ自動車・豊田章男会長の発言にも代表されるように、会社が「社員の安全装置」としての機能を維持することは非常に困難な時代環境に変わってきており、それをビビッドに感じ取っている人を筆頭として、それでも生き残っていくための新たな生態系として、アルムナイという人間も取り込むような変化が起こっているように感じます。

最後に、今回このような想いを巡らせてきて思うことは、日本的な大企業という存在が今後の環境適応力を増していくためには、同じ会社に属していることでまったくの他人とは異なる出逢いが出来るという利点を再認識した上で、社員という人間同士が、共感し合える要素をお互いに見出すプロセスを大切にした上で、協力・協働作業するという経験機会をいかに創り出していけるかという点が、必要とされているのではないかということです。そして、今回のインタビューは、この先、労働市場の流動化の潮流の下では、アルムナイと企業との関係度合が、「その企業が社員に対して良好な出逢いや経験機会を創り出せているか」を推し量る重要な指標になってくるのではと思える企業人との大きな意義のある出逢いの機会でした。

執筆者:研究員 大門孝行

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