連載コラム#01「アルムナイという“兆し(サイン)”」始めます。

連載コラム「アルムナイという“兆し(サイン)”」始めます。

アルムナイ研究所では、先だって、アルムナイネットワークに参加している「個人」に注目して実施したアンケート調査レポートをリリースしました。そこでは、得られた結果をもとにキャリア観や転職経験などの分布分析、個々人のキャリア観・働くうえでの重視事項・アルムナイネットワーク内での体験とアルムナイネットワークに対する評価の相関分析を行いました。
並行して研究所として取り組んだのが、「組織」に着目しアルムナイ組成に着手した企業担当の方々に対して行ったインタビューです。そこから浮かび上がって来たのは、さまざまな“兆し(サイン)”。本コラムでは、アルムナイというアンテナを通じてキャッチした“兆し”を定期的にレポートすることで、働き方や社会の変化を追跡・発信して行きます。第1回は、どのような兆しが生まれているのか(What)、誰によって推進されているのか(Who)、そして、なぜその兆しが生まれているのか、背景にあるものは何か(Why)の3つの視点で解き明かしたいと思います。

What:どのような兆しが生まれているのか

第一の「どのような兆しが生まれているのか(What)」。ここでは、「組織・企業の在り方」と「人事の在り方」の変化に着目しました。そのキーワードは“多様性”。永らく提唱されて来たD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)ですが、組織内に留まらず社外の人材も含めた人材の経験や知見を得なければ変化の時代に対応できない状況が訪れ、組織の在り方も固定的な「企業」という形から柔らかな「コミュニティ」へと変貌を遂げつつあります。それに伴って「人事の在り方」も変化を迫られています。人材流動性が高まる中、人事はよりしなやかな対応を求められ、中央集権的な姿から脱却する「人事パーソン自体がアップデートする必要」(インタビューより)が増しています。

Who:誰によって推進されているのか

第二の「誰によって推進されているのか(Who)」。ここでは「しがらみからの脱却」という兆候が見えて来ました。インタビューさせて頂いた取り組みは、いずれも若手社員の皆さんがリードされています。また、当該企業に最近入社した方が推進されている事例もありました。現在、急速に広がりつつあるジョブ型や人的資本経営といった変革の取り組みでも、長く同じ組織で働いて来た社員ではなく、変革の方向性に共感して外部から入社した人材が推進している事例が見受けられます。過去の成功体験やしがらみに囚われず、新鮮な目で果敢に取り組むからこそ、新しいコミュニティ形成を実現できるのかもしれません。そこには「メンバーシップ型」からの脱却に踏み切る企業の意志を感じます。

Why:なぜその兆しが生まれているのか

そして第三の「なぜその兆しが生まれているのか、背景にあるものは何か(Why)」。現在、多くの企業がアルムナイ組成に踏み切っている背景に、「ジョブ型」「パーパス経営」「人的資本経営」といった現象があるのは想像に難くありません。しかしその底流にあるのは、事業を取り巻く“グローバル化”や“デジタル化”などの環境の変化に拍車がかかり、それに適応しなければ生き残れないという経営者の切実な危機感です。アルムナイをスピーディに立ち上げる組織に共通するのは、いずれも「個人と組織の新しい関係」への強い問題意識を持つ経営者の存在です。

何よりも、アルムナイという取り組みを通じて、「退職者」という存在への見方を大きく変えなければいけない、あるいは「退職者」という概念そのものを変えなければいけないという意識が広まりつつあります。一方で、アルムナイという取り組みを健全な形で推進する組織には、そもそも「個人と組織の信頼感」を大切にするDNAが備わっています。

ますます変化する時代の中で、アルムナイと言うメガネを通じ、どのような“兆し”が生まれて行くのか。これから生まれる新しい働き方や組織の在り方の中で、アルムナイはどのような役割を果たすのか。そして、日本企業が培って来た良さを生かしたアルムナイの在り方とは。本コラムを通じて、解き明かして行きたいと思います。どうか、ご期待ください。

執筆者:アルムナイ研究所 所長 酒井章

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です