第2回 アルムナイ実態調査レポート/研究員・土橋隼人の所感

第2回 アルムナイ実態調査レポートについて、アルムナイ研究所の研究員・土橋隼人の所感を紹介します。

>>第2回 アルムナイ実態調査レポートはこちら

数年前から人事領域における注目概念として登場したアルムナイですが、ここ最近ではジョブ型人材マネジメントへの変革やそれが志向する「企業と人の関係性の見直し」にとって必須の取り組みの一部としてアルムナイネットワーク構築の必要性が語られるようになってきました。しかしながら、アルムナイへの注目度の高まりにより先進的に取り組む各社の取り組み内容が一般に紹介される機会が増えたものの、ネットワークのなかにいる人たちが期待していることや満足度などについては十分に議論される機会はありませんでした。

この調査は企業のアルムナイ(退職者)ネットワークに所属し、活動している個人(退職者、現役社員)を対象としてアルムナイネットワークへの期待値や満足度を把握することを目指した(おそらく)国内初の調査です。調査対象となった方々は「特殊な集団」ではありますが、「その世界」に一足先に足を踏み入れている人たちであり、人と組織の関係の見直しを検討している企業にとって参考になる部分が多いものとなっているのではないかと考えています。

今回の調査結果から私が感じたのは、アルムナイ活動高度化の余地とアルムナイネットワークの効果・価値の把握の必要性の2点です。

一つ目はアルムナイと現役社員との交流への取組み拡大・高度化です。アルムナイネットワークで体験した内容とアルムナイネットワークに対する評価の関係については、アルムナイ同士の交流やビジネス連携が特に評価への高い相関を示すことが明らかになりました(図8)。一方、正の相関ではあるものの、アルムナイと企業との取り組み(アルムナイによるナレッジ共有、アルムナイが現役社員の相談に乗る 等)については前述の要素と比較するとそれほど強い関係は確認できませんでした。加えて、アルムナイネットワークへの期待値についても「アルムナイ同士の交流・近況把握」がもっとも高かった反面(71%)、「社員との交流期待」は低い数字となっていました(24%)。この結果からはアルムナイ事務局側が社員との交流の魅力を十分に訴求できていない、もしくはそのような体験を十分に提供できていない可能性が示唆されます。これではアルムナイネットワークの効果として語られることの多い、現役社員に対するメリット(エンゲージメント向上、イノベーション創出 等)が創出されにくい状況となっており、ネットワークの価値を十分に活かすことができていないように考えられます。

2点目はアルムナイネットワークの創出する効果・価値の把握の必要性です。今回の調査ではアルムナイネットワークに所属する人の満足度を確認しましたが、アルムナイネットワーク設立や投資拡大の要否を意思決定するためには当事者の感じている満足度の先にあるアルムナイネットワークが創出する効果や価値まで明らかにする必要があると考えています。アルムナイネットワークの効果や価値、例えばアルムナイとのコミュニケーション量と現役社員のエンゲージメントの関係、アルムナイの元所属先企業に対するエンゲージメントと採用ブランドの関係などについても視野に今後の調査の方向性を議論したいと考えています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です