第2回 アルムナイ実態調査レポート/研究員・黒丸修の所感

第2回 アルムナイ実態調査レポートについて、アルムナイ研究所の研究員・黒丸修の所感を紹介します。

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ここ数年、各種メディアでアルムナイ、アルムナイ制度という言葉を目にする機会が格段に増えてきて、アルムナイへの注目度が高まってきていることを実感しています。その多くは企業の経営/人事戦略に基づいた再雇用や人的資本といった企業側の文脈で語られていますが、企業内キャリアカウンセラーとして社員のキャリア支援を担っている私は、アルムナイネットワークでつながることがアルムナイのキャリア形成や成長にとってどのような価値をもたらしうるのかという点に興味を持っています。

今回の調査は、まさにアルムナイネットワークに取り組む効果をアルムナイの立場から探ってみようという意図で、おそらくあまり前例のない取り組みだったのではないかと考えています。回答者の母集団は、就業者全体よりも転職経験が多く、より能動的キャリア志向の高い集団であり、これからの時代を少し先取りした結果と捉えることができるかもしれません。

そこから見えてきたものは、アルムナイはアルムナイ同志の交流や他のアルムナイの近況を知ることをネットワークの体験価値として評価していることが一つ。キャリアを考える上で、人との対話を通じて自己理解を深めることが重要です。能動的キャリア志向の高いアルムナイが、かつて同じ会社で働いていたというある種の親和性や信頼感をベースにフラットにつながって対話し、自分自身のキャリア形成の考えを深めたり、互いに刺激し合い励まし合う。そんな最適な対話相手がネットワークでの交流から得られるというのは、アルムナイネットワークが創り出す重要な価値ではないでしょうか。

もう一つは、「経営理念・企業のビジョン・社風」を重視する価値観がアルムナイネットワークの評価と関係している点。アルムナイネットワークの成立の仕方を調査した第1回アルムナイ実態調査では、アルムナイの取り組みを進めている企業の共通点として、人と組織を重んじる企業文化が存在することが示唆されました。ネットワークでアルムナイ同志が主体的につながりその価値を体感する求心力として、やはり愛着を感じ信頼を置く会社のカルチャーや風土の存在が欠かせないということが改めて確認できたように思います。それぞれの企業が紡いできたユニークなカルチャー・風土が会社とアルムナイ間のみならずアルムナイ同志の求心力として機能し、アルムナイ同志が相互作用しながらキャリア発達を遂げていく。ネットワークと信頼で結ばれる人と組織の関係性が、これからの日本におけるキャリア形成の重要なキーワードになってくる。そんな気がしています。

このようにアルムナイネットワークをアルムナイの視点で見ると、企業側が求める価値とは別の価値を重視している構図が見えてきます。アルムナイの取り組みを成功させるためには、企業とアルムナイがwin-winになるような取り組みが求められます。今回の調査からの示唆が、少しでもそのヒントになればと願っています。

今回、2022年時点でのアルムナイネットワークの効果をスナップショットとして調査しましたが、日本でのアルムナイの取り組みは進化の途中であって、この先アルムナイにとってどのような価値を生み出していくのか非常に興味あるところです。今後も研究を継続して、得られた示唆を広く共有していけるよう努めてまいります。

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