第2回 アルムナイ実態調査レポート/所長・酒井章の所感

第2回 アルムナイ実態調査レポートについて、アルムナイ研究所の所長・酒井章の所感を紹介します。

>>第2回 アルムナイ実態調査レポートはこちら

■レポートコメント(酒井)

アルムナイに取り組む組織(企業)の中に身を置く人たちは、実際どのように感じているのか。そして、アルムナイというものが、これからの日本におけるキャリアにどのように貢献するのか。本レポートは、上記のような問題意識から行ったリサーチをレポートとしてまとめたものです。導き出された結果は日本人のキャリア観・働き方観の現在地を如実に反映するものとなりました。

私が着目したのは以下の点です。第一に「今後のキャリア」について「わからない」と回答した層が50代で急速に高まっていること。それぞれの年代のキャリア観は、その時代の状況を反映します。中でも現在の50代層はバブル時代に入社し、正に日本(メンバーシップ)型雇用体系の中でキャリアを積んで来ましたが、働き方を取り巻く環境の激変のインパクトを最も大きく受けています。本調査への回答は、その困惑が表れていると思われ、それは現在の日本企業が直面する状況とも重なります。第二に「アルムナイに求めるもの」について、ネットワーク(つながり)を構築するだけではなく、何らかの“体験”につながる点が評価されていること。大きな変化が訪れるいま、企業人には単なる交流を越え、より真剣モードの行動が求められおり、そのニーズに応えるアルムナイへの期待が反映されていると言えるでしょう。そして第三に「働く上での重視点とアルムナイへの評価の相関」については、「自分の能力を高めること、専門知識を活かせること」「社会をより良くしたい、社会に役立ちたい」という項目の数値が高く出たこと。一方、アルムナイへの期待値が低く出たのは、組織から与えられるものへの期待の高い層でした。

いま、多くの企業が経営戦略・事業戦略や制度変革を「一気に」断行しており、そこでの合言葉は「キャリア自律」。しかし、それはかつてのメンバーシップ型における「自立なき自律」ではなく「自立のための自律」へと変質しています。これからは、自らキャリアの道筋を描きスキルをアップデートすることが求められて行くことでしょう。そして、そこでは「自らの能力を高める」「社会課題に目を向ける」ことが、より一層必要となります。アルムナイという取り組みは、正にこれからのキャリアや働き方に求められるもののフィルターだと言えます。一方、現在のキャリア自律ブームは「自己責任」になりかねない危うさを秘めていることも事実です。 “ヒエラルキー”ではなく“フラット”なコミュニティであるアルムナイは、自律と同時に「相互扶助」としての、これからの組織の在り方を指し示すものでもあると言えます。

最後に。本研究所は「人と組織のより良い関係」を理念として掲げて発足しましたが、本調査を受け「人と組織と社会のより良い関係」へと進化しなければいけないかもしれないと思い始めています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です