第1回 アルムナイ実態調査レポート/研究員・土橋隼人の所感

第1回 アルムナイ実態調査レポートについて、アルムナイ研究所の研究員・土橋隼人の所感を紹介します。

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研究員・土橋隼人の所感

今回のリサーチではアルムナイネットワーク導入に至るまでに直面する課題とその課題を突破させる因子について明らかにしましたが、この活動を通じて多くの企業のアルムナイネットワークの取り組みについて伺うなかで私の中に浮かび上がったことは「多様性」と「1つの共通点」でした。

まずはアルムナイネットワークの多様性です。活動内容はもちろん、その起源や目的も企業によってさまざまでした。退職者の間で自然発生的にネットワークが形成され、途中から企業が関与し始めたケース、事業環境の変化などに伴い企業として変革の必要性に迫られ、アルムナイに目を向けて交流を始めたケースなど。また、推進を担う方も人事企画担当の企業もあれば、キャリア開発支援担当の方の企業もありました。

その多様性が目立つ一方、取り組みを一定以上進めている企業には共通点があることに気づきました。それはどの企業においてもアルムナイネットワークと親和性の高い人材マネジメントやカルチャーが存在している(もしくはそれを目指して改革を進めている)ということです。

これは「人と組織の関係」を「組織からの保護と組織に対する忠誠心」ではなく「お互いの求める・提供可能な価値を把握し、提供し合う対等な関係」と捉える立場と表現できます。

インタビューを振り返ると、例えば採用において企業が一方的に選ぶ側ではなく候補者のやりたいことを実現することをサポートする存在であると発信する、異動においてまずは個人の意思を確認したうえで決定するなどのコメントがありました。

このようなカルチャーのなかでは退職は雇用関係の終了を意味するだけで、退職後も関係を維持することが当然のことと認識されるように思います。

仮に一定以上取り組んでいる企業の共通点が上記のようなものだとすれば、ここからアルムナイネットワークが「導入」ステージから本格的な運用ステージに移行するためのヒントを見ることができるのではないでしょうか。

アルムナイネットワークの効果は多岐にわたるため、状況にあった目的を選択して訴えることで「小さく始める」ことが容易であるように思います。反面、効果が幅広いことは関係者も多くなり、ややもすると同床異夢による空中分解という事態も招きかねないリスクもはらんでいるように思います。

そのような事態を回避するためにはこの取り組みを企業が置かれた環境や事業課題への対応策としての「人と組織の関係の変革」の物語のなかに位置づけ、人材マネジメントやカルチャー全体の変革へとつなげることが鍵となるのではないか、そのように考えています。

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