第1回 アルムナイ実態調査レポート/所長・酒井章の所感

第1回 アルムナイ実態調査レポートについて、アルムナイ研究所所長・酒井章の所感を紹介します。

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所長・酒井章の所感

2020年7月にアルムナイ研究所を設立して以来、「OB/OGとのつながりをつくりたい」という機運が急速に高まっていることを実感してきました。

しかし、果たしてどのように着手したらいいのか、そこにどのような課題があるのか、その課題をどうクリアすればいいのか……。現在、アルムナイの設立や継続に向けて摸索されている皆さまの奮闘に応えることのできる、リアルな実態を明らかにしたい。そのような思いから、アルムナイ実態調査はスタートしました。

多岐に渡る業種でアルムナイの活動に実際に関わっていらっしゃる方々の「語り(ナラティブ)」に耳を澄まし、分析を通して見えてきたもの。それは、正に本研究所が理念とする「人と組織のより良い関係性」への示唆となるさまざまなヒントでした。

「アルムナイ」といっても、その在り方は多様です。

まず、その成立の仕方は、これまでどちらかと言えば自然発生的なものが主流でしたが、現在高まるニーズの背景には事業環境変化というインパクトが存在することが明らかになりました。その環境変化に適応するために変わりつつある会社や組織の在り方が「アルムナイ」という現象となって表れているのです。それは新型コロナという未曽有の事象によって拍車がかかることでしょう。

また、「人やチームワークを大切にする文化」を有する企業ほど、その立ち上がりのスピードが早いことがわかりました。

一方、立ち上がったのちに継続するための共通した要因としては「アルムナイというネットワークをより良くしたいという『理念や思い』と『実利』のバランスが取れていること」が挙げられ、それを支えるものがアルムナイと企業間、そこに参画するメンバー同士の「リスペクト(尊重)」だということが明らかになりました。

そして、本調査を通じて得たものは、私たちが当たり前だと思っているさまざまなものを問い直すアルムナイという「フィルター」です。

まず個人のキャリア。いま注目されている成人発達の観点からも、アルムナイとの関りを通じて変化に適応して自己変容しキャリア発達を遂げる可能性があります。

次いで組織の領域。会社の在り方が大きく変わっていく一つのカタチがアルムナイだとすれば、現在、多くの企業や組織が取り組む組織開発(Organization Development)の進化系という見方もできます。

そして、社会への影響。新型コロナウイルスによって緊急性が高まっているのが資本主義という仕組みの見直しであり、これまでの枠組みを超えた共同体の意義が叫ばれています。アルムナイという現象は、これからのキャリア、組織そして社会が向かう方向性への示唆になるのではないでしょうか。

本調査は、まだ端緒についたばかりであり、その目的とする「日本の企業や文化」に基づいたアルムナイの在り方を提示するには至っていません。今後は、更に事例を検証しながら知見を蓄積し「日本ならでは」のアルムナイの在り方を提示することを目指します。

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